ガバナンス
 

なぜガバナンスが重要なのか?

 ミレニアムから15年が経過した現在、かつての途上国は、BRICSやG20のように新興国としてめざましい発展の軌道に乗ったグループと、紛争や低開発のループに陥ったままのグループとに二極化してきた感があります。両グループを分けた要因はどこにあるのでしょうか?

かつて途上国の「国づくり」の成否は、資源の量、それを配分する自由市場の有無などによって説明されました。しかし近年明らかになってきたのは、資源の配分の方向性を上手に「舵取り」していく公共部門の制度的能力、いわゆる「ガバナンス」が決定的に重要であるという事実です。確かに、どんなに資源があり市場が開放されていても、腐敗した政府が資源を浪費してしまえば、国の発展には繋がりません。

 

公共部門のガバナンスとは何か?

 公共部門のガバナンスは、三つの段階に分けて捉えることができます。すなわち、その国の人々にとって適切なルールや政策を社会全体の意思として公的部門が「決定」する段階、「実施」する段階、そして「適用」する段階です。これらの一連のプロセスはそれぞれ、立法、行政、司法として整理できますが、互いに関連しており、国としての舵取りが失敗しないためには全ての段階を通して制度能力が備わっている必要があります。例えば、どんな適切な法律を策定しても、それを実行する行政官が育っていなければ絵に描いた餅になります。どんなに効果的な行政制度が整備されたとしても、その行為の適法性を適切に判断する能力が司法に備わっていなければ、機能不全に陥るでしょう。ガバナンスは 国づくりの基幹部分であり、ある種のソフトなインフラストラクチャーとして捉えることができます。

 

国際開発に関するガバナンスをどう捉えるか?

 現在、途上国が直面している課題の多くはガバナンスに起因していると考えられます。途上国自身の公共部門のガバナンスのあり方こそが途上国の開発をめぐる問題の本質であり、国際開発ガバナンスの第一の柱となります。

国際開発に関わるガバナンスは、途上国国内の公共部門だけに留まりません。途上国が発展のために必要とする資源は国内からの調達だけでは間に合わないため、海外、特に先進国や中進国からの国際援助をはじめとした資源移転に頼ることが多いです。そのため、途上国の開発のあり方は、今やそれを支援する他の国の意志決定や政策実施にも左右されるのです。その代表的な例がODA(政府開発援助)であり、ODAを供与する側の先進国の公共部門のガバナンスもまた、考慮の対象にならざるを得ないということになります。

加えて、途上国への国際協力のあり方は、ミレニアム開発目標(MDGs)や持続可能な開発目標(SDGs)に象徴されるように多国間のグローバルな枠組のなかで決定、実行、適用されるようになってきています。つまり、グローバルなガバナンスもまた、国際開発ガバナンスの柱の一つとなります。

 

国際開発ガバナンスにどう接近するか?

 ガバナンスの3つの要素それぞれは政治学、行政学、法学によって研究されています。特に、途上国のガバナンスについては、それぞれ政治学、行政学、法学から派生した開発政治学、開発行政学、開発法学という固有の学問領域によって分業されています。

 国家のガバナンスのあり方の特殊性や普遍性、その形成要因等を明らかにするためには、途上国や先進国をまたがる多様な国家間の比較分析が有効ですが、それぞれ比較政治学、比較行政学、比較法学という派生的な学問領域が存在します。

 グローバルなガバナンスの領域においても同様に、国際政治学、国際行政学、国際法学といった学問分野ごとの分業が進んでいます。

 ガバナンス分野の専門家になるためには、三つのコア・ディシプリンすなわち政治学、行政学、法学のいずれかを基軸とし、国内ガバナンス、グローバルなガバナンス、および両者の相互作用について研究してゆくことが求められます。途上国のガバナンス理解のためにも、先進国や中進国のガバナンスとの比較や、グローバルなガバナンス構造を経由してもたらされる援助供与国からの影響についても目配せをしておく必要があるでしょう。

→横浜国立大学国際社会科学府「国際開発ガバナンス教育プログラム」のご案内